『軍曹の貧乏旅行』

        冬の北海道    其の二


             


平成12年元旦

 5時に目が覚めたがシュラフからナカナカ出られない。 
6時頃モソモソ起きてメシを炊く。水筒の水は当然凍り
付いていて、テント前の雪を鍋一杯に盛ってきてストーブ
に掛ける。しかし鍋一杯に盛っても、火に掛けて水にな
ると極わずかしかない。米は一合半。おかずは昨夜の残り。 
ゆっくりしすぎて一段落付いたのは9:30頃になっていた。

 冒険家の青年とお互いの旅の安全を誓い合って別れた。
彼はやはりヒッチハイクで阿寒に向かうらしい。Good Luck! 
私は今日一日、知床半島をトレッキングする予定なのだ。
知床横断道路は知床自然センター入り口付近で、ゲートに
より遮断されている。

知床林道を知床五湖方面にトレッキング開始。5q程行くと
岩尾別川にたどり着く。この辺りから雪がだいぶ強く降り始めた。
険しい岸壁の下は重苦しい色をした、オホーツク海の波が
激しく打ち寄せている。岸壁は雪で真っ白。雪であまり遠くの山
はハッキリ見えないが、緩やかではあるが標高の高い山々が
折り重なっている。海岸はずっと岸壁で砂浜は無い。雪の中
にいろんな動物の足跡がある。シロウトの私にはそれがどんな
動物なのか判断出来ない。人間の手のひら半分程の大きさだ。
三本指の物もあれば鹿らしき物もある。


 
風花舞う冬のオホーツク海


 岩尾別川の河原で暫く遊んだ後、雪の土手をよじ登ると目の前を
クロスカントリースキーヤーが二人滑ってきた。こっちも驚いたが向
こうも驚いたようで、ほぼ同時に「Wow!」。まさかこんな山の中に人
がいるとは思っても見なかった。クロカンスキーヤーは私のことを熊
だと思ったらしい。更に驚いたことに彼らは掛川市から来ているという。
乾パンとソーセージの昼食を取り、同じ道を引き返す。
もっと時間があればなぁ・・・・・・。
 オペレの滝に行ってみた。この滝は地中からしみ出る水が滝に
なっている。最も今は全て凍り付いているけど。辺りはたくさんの海
鳥が巣を作ているコロニーになっている。

 15時頃やっとバイクにたどり着く。知床横断道路のウトロ側下りは、
高速ワインディングの連続で非情にオモシロイ。路面はアイスバーンの
上にうっすら雪が積もっている。直線は70q/hで走る。コーナーも進
入時から抜けるまで、ずっとカウンターを当てて50q/hで走れる。
スノーモービルの連中も対向車線を飛ばしてくる。あまりの面白さに何
度も往復した。サイコー!下りきってからは海岸沿いの直線道路をア
クセル全開!!サイコー!スパイクタイヤはエライ!

 Aコープでビール1gを仕入れてキャンプ地へ帰ってきた。
今日は僕一人だ。本日のメニューは昨夜の残り汁に豚肉とネギ・ニラ
を入れて煮た。早い話が昨夜と同じメニューである。
何故か1gのビール飲み干せず、残りは歯磨きに使った。




知床林道をトレッキング


1月2日


 
6時起床。飯は北海道寒干しラーメンとコーヒー。2日間の宿を取ら
せて頂いた、国設知床野営場を後にしたのは9:40。雪は相変わらず
降り続いていた。一路斜里を目指す。雪はいっそう強くなり、フワフワの
雪が真っ正面から向かってくる。路面はアイスバーンの上に新雪が積
もっており、走りながら片足を雪の中に突っ込むと、サラサラのパウダー
スノーが流れるように飛んでいく。前に自動車が走っていると、巻き上げ
る雪煙で前が見えずコワイ。しかし自動車がいなくなると道路と畑の境目
が解らずこれもコワイ。峠が近づくにつれて次第にコーナーが多くなる。
コーナーの度にどうしてもスピードが落ち、再加速するときにアクセルワー
クを気を付けないとケツを振りトラクションしなくなる。心細い燃料を気にし
ながら根北峠に着いた。下りの標津側は斜里側よりも除雪されていて、ア
クセル開け気味の60km/h走行。気持ちよし。
峠を下りきったところでライダーとすれ違う。野付半島へ行ってみたかったが、
残燃料が非情に心許ないので諦めた。
 
 中標津町でやっと営業中のGSを見つけ、ガス欠寸前のセローに燃料を
補給する。正月休みで何処も営業していなかったのだ。R272を釧路に取る。
釧路まで90kmだが殆ど直線で、路面は完全に除雪されているので快適なクル
ージングだ。しかし快適クルージングが辛い。体をまったく使わないので体温
はグングン下がる。雪道走行では体を使ってバランスを取っているので結構
暑くなっていたのだ。
途中かじかむ手でポケットの乾パンをポリポリ食べて昼食とした。走る走る!
バス停も信号機も何にも無い。時々牧場のサイロが出現するだけだ。
釧路まであと20kmという辺りで、厚岸部界林道の入り口を見つけた。
舗装路走行に飽きていたので気晴らしに突入した。4輪の轍がカチコチに
凍っているので、轍からフロントが外れると大変だ。
おかげで体もホカホカに。釧路市内に入ったのは15:00を回っていた。
 
 梶原さん宅にチョット寄るとお母さんがお茶を出してくれました。
「今日は晴れたので夜は地面からシンシンと冷えますよ。寒かったら家においで」と
心配してくれました。スーパーでレタス、ハム、食パン、ビールを仕入れて、
梶原さん宅が建つ丘の下にあるNTT釧路運動場入り口ゲート前に設営した。
 本日のディナーは食前酒にビール、前菜は柿の種、メインディッシュは乾パン。
時間が経つにつれ気温はグングン下がる。釧路の夜景を見ながら、今日も無事に
旅が出来たことに感謝して缶ビールのプルタブを引いた。
これが今回の北海道最後の晩餐だ。
北海道の自然に!知床の寒さに!梶原さん親子に!
氷点下で荒っぽい運転に耐えてくれたセローに!すべてに乾杯!


厚岸部界林道


 

1月3日

 昨日に続き晴れ。5時起床。足の指先がジンジンしてよく眠れなかった。
シュラフカバーの口の部分は自分の息で凍っており、マットとシュラフカバー
の間も凍っていた。上半身を起こした時、メリメリメリと霜の剥がれる音が
するのだ。テントの内側も霜が着いており、ファスナーを開けようとしたら
ファスナーも凍り付いていた。今回最高の冷え込みだ。
たまらずストーブを点火しようとするが、寒さのせいか旨く着かない。
ブレックファストは食パンと冷凍ミカン、冷凍レタス、ホットシーチキン。梶原さん
宅にタイヤを取りに行き、近くのGSで場所を借りてタイヤをノーマルに交換した。
 MOOという物産店で土産を買った。財布を見ると帰りの高速代が無いではないか!
銀行はまだやってないし困ったねぇ。

 12:00ターミナル着。12:30定刻に近海郵船 “さろま” は岸壁を離れた。
見送りの人達で岸壁はいっぱいだ。みんなずっと手を振っている。
僕は一人遠ざかる釧路の街に別れを告げた。
30日にこの港に着いたときのあの、嬉しくて堪らない気持ちを思い出しながら・・・・・
 
 今回の旅は大変面白かった。時間がたくさん取れなかったのが残念だけど・・・・・・・・
まぁ社会人なんだから仕方ないわな。


今回の旅装備




1月5日

 
AM2:00頃自宅に到着。寒かった〜。
装備を部屋まで運び急いで布団に入った。
 6時間後には仕事だ。

 

 

17:00に仕事を終わり、そのまま有明埠頭から釧路へ。
家に帰ってきたのは02:00でその朝から仕事初め。
社会復帰後の旅はいつもこんな感じで、貴重な連休を目一杯使って楽しみます。

旅って本当にオモシロイね(^_^)V

              

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